日本人の「繊細さ」をどう生かしていくか

どんな国どんな民族にも長所と短所がある。日本人は繊細で細かいところまで仕事をするという長所がある。たしかにレストランでも料理は丁寧で繊細。2000円台で非常においしいランチを食べられる。電車は時間通りに来るし、街も掃除されている。良いことは多い。

日本車も同様。日本やヨーロッパのようにそんなに国土が広くなく道路が整備されている国ではどんな車でも問題なく走るかもしれない。しかしアメリカのように国土が広いと燃費のいい日本車のほうが有利だろうし、中東の砂漠とか道路の状況が悪いところでは日本車しか走らないと言う。

私は海外旅行が好きだ。海外の文化は非常に刺激的。しかし海外に行くたび思うのは日本もけっこういいぞという感想。商品もサービスも心くばりが行き届いている。日本の長所として、いちばん先に挙がるのがこの点である。

しかし日本の製品やサービスはオーバースペックだとも言われる。過剰に不必要に細かいところまで完璧にするので、生産性が下がる。ビルの清掃とかも見ていると、すでにきれいなのにさらに掃除している。清掃ひとつも「清掃道」という「道」になっている。もともと職人気質でさらに「お客様は神様です」という価値観があるためさらにオーバースペックになる。

細かいところに気付くのは長所。しかしさらに日本人には大局観がないといわれる。下の図で日本人は右下のOR型。「繊細で大局観が無い」パターン。



しかも現代日本は深みや思想がないと言われる。丁寧だが深みと思想に欠ける。日本企業で働く外国人は現代日本人の思想の無さにイライラする。その気持ちは私にはよくわかる。

日本人は自分自身の繊細な性格をどう生かし、それとどう付き合っていくべきなのか。すでにこういう場合取りうる選択肢を4つ示した。
①OR型でいく。その際自分の長所と短所を認識する。
②OR型で行く。そして自分の短所を補う相手と組む。
③バランス型中庸を執る。
④ハーモニー型中庸を目指す。

日本人の繊細さをどう生かすかという問題もこの4つの選択肢がヒントになる。①は現状維持である。現状の「あまり大局観が無いが繊細な状態」を維持する。悪くはないが、現状維持で改善は望めない。

②も基本的に現状維持。ただ大局観が無いという日本人の短所を補う国と組む。大局観のある他の大国と組んでいく。現状こうなりつつあるが、これもお勧めではない。他の国に依存するのは独立が危ぶまれる。

③はバランス型中庸。日本人の繊細さをある程度修正して大局観を得ることを目指す。例えば私自身は日本人なので外国人から見たら、日本人らしく細かい性格である。しかし恐らく日本人からすると多少大雑把な性格。私個人は日本人と外国人の中間でありバランス型中庸を執っていることになる。現代日本生きていて国際化した現代においてはバランス型中庸がちょうどいいかもしれない。私自身は戦略的にバランス型中庸を執っているのではなく、もともとそういう性格。日本全体がバランス型中庸を執るというのもひとつの選択肢。しかしせっかくの日本人の繊細さがある程度犠牲になる。

④のハーモニー型中庸も有力な選択指。日本人の繊細さを保ちながら、同時に大局的な判断もできるようにする。大局的にして繊細。大局観を得るには恐らく普遍的で大局的な生きた思想が復活する必要がある。幕末は日本人には思想があった。当時の志士たちは大局的な判断ができていた。

しかし昭和になることから儒教がなくなり、西洋思想も表面的にしか理解できないため、合理的で大局的な思想は実質的には無くなった。神道のみ残った。戦後はその神道も無くなり、大局観は失われていく。

日本人の繊細さを保ちながら、大局的な深みのある思想を蘇らせていくというのが最も理想的。それができれば日本人は「大局的かつ繊細」「深みのある合理性」というハーモニー型中庸を実現できる。ただ難易度は高い。

結局は日本人一人一人が決めることでもある。自分は繊細なOR型で行こうかなとか。自分は日本人には稀な大局型なのでそれを生かしていこうとか。自分はバランス型中庸で行こうとか。自分は繊細なOR型だが大局観のある同僚と組んでみるか、など。難易度は高いがハーモニー型中庸を目指すのもいい。

この4つの選択肢は、自分の能力をどう生かしていくかを考えるうえで有力なヒントになる。他人から相談された場合もこの4つの選択肢を提示して、最終的に本人に選んでもらうのがいい。4つのうちどれがいいかはケースバイケース。しかしほとんどの場合、④のハーモニー型中庸が最も理想的。しかし通常難易度が高いので無理しないほうが良い場合が多い。③のバランス型中庸は常に有力な選択肢になる。実現が難しくないし、失敗も少ない。明らかにコスパが良い。しかし場合によっては若干個性が失われる。①のOR型も個性を失いたくない場合は有力。②OR型で自分の短所を補う人と組むのも有力。信頼できる相手を探すのが大変だが、うまくいくとハーモニー型中庸以上の効果が生じる場合がある。

■作成日:2023年8月31日

続きは「コスパ主義」の背後にひそむ現代日本の根本問題をご覧ください。

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