傲慢にして卑屈 がさつにして神経質 頑固にして無節操

人はみな長所があり、短所がある。「自信がある」という長所の反面が、「傲慢」という短所であり、「謙虚」という長所の裏に「卑屈」という短所がある。人はみな一長一短なのだ。しかしたまにそれが成立せず、短所しかない人がいる。「傲慢にして卑屈」な人である。

『論語』泰伯篇から引用する。

書下し文
子曰く、狂にして直ならず。
同にして愿ならず。
空空にして信ならず。
吾はこれを知らず。

現代語訳
孔子が言われた。
気が大きいくせに、まっすぐではなく、
子供っぽいのに生真面目ではなく、
馬鹿正直なのに誠実ではない。
そんな人は私もどうしようもない。

環境依存文字があるので正しい漢字で書けなかった。書下し文は参考までに。

書いてある通りだが、昔の文章なのでややわかりづらい。分かりやすい例を書いていく。

「がさつ」という短所を持つ人はその反面「大胆」という長所を持つが、がさつなのに大胆ではない人がいる。神経質な人は繊細さがありそうだが、神経質なのに繊細ではない人がいる。



このシリーズではAND型とOR型を区別している。ハーモニー型中庸はAND型である。図の上。「S AND T」は「SかつT」である。「大胆かつ繊細」。バランス型中庸も一応AND型。真ん中のAND型。中間をとる。

OR型は「S OR T」。「SかT」である。大胆と繊細のうち片方だけ。真ん中の左。「大胆・がさつ」の人。もしくは真ん中の右。「繊細・神経質」の人。

さらに今回のNOR型がある。NORとは「S NOR T」。「SでもTでもない」を指す。大胆でも繊細でもない。逆に「がさつ」かつ「神経質」である。これが孔子が言っている内容だ。

だまされない人は賢い。しかしその反面疑い深い。OR型。素直な人は素晴らしい。しかしその反面だまされやすい。やはりOR型。ハーモニー型中庸は素直なのにだまされない。非常にすぐれている。それに対してNOR型は疑い深くだまされやすい。



信念を貫く人は頑固でかたくなな人が多い。OR型。柔軟な人は節操がない場合がある。OR型。ハーモニー型中庸を執る人は柔軟でありながら信念を貫く。NOR型は頑固でかたくななのに節操がない。



ほかにも例を挙げる。理想がある人は現実無視になりがち。現実を見る人は理想を持たない。ハーモニー型中庸は理想を持ちながらその実現のために現実を見る。NOR型は理想はないけど現実無視。

新しいものは根なし草になりがち。古い伝統はすぐれているが古臭い。ハーモニー型中庸は新しくかつ古い伝統に基づく。NOR型は古臭いけど根なし草。

こういう人はどうしようもないと孔子は述べている。教育熱心な孔子もこういう人は教育しない。恐るべきNOR型である。

私はそういう人を非難しているのではない。私自身苦手分野に関してはそういう場合はある。例えば若い頃独り暮らしを始めた時、机を買うと自分で組み立てる必要がある。わたしは小学校の頃から工作系がとても苦手だった。工作に関してはがさつにして神経質。どうでもいいところを気にして重要なところがおろそかなので、そのうち机が傾いて崩壊しそうになった。

孔子さまはお忙しいのでNOR型のひとを指導はしない。そういう人と付き合う時間は無い。しかしNOR型だったわたしは自分自身とは今後、長年にわたって付き合っていく必要がある。だから孔子さまが見捨てても自分で自分を見捨てるわけにはいかない。NOR型であってもそこから努力をし成長を試みるべき。

私自身つい最近、買ったものを組み立てる時、ねじがなかなかしまらなかった。20代の頃の私ならめんどくさがって「しまらないネジが悪いんだ」と言って、ネジをきちんと閉めずに完了していたはず。買ったものはあとから崩壊したはずだ。しかし現在の私は何とかそれを克服した。ネジがしまらないのはネジが悪いのではなく、ドライバーの質が悪いので、指や手がネジを回そうとする力が、ネジにきちんと伝わってないんだ、とそのうち気づいた。ドライバーを良質なものに変えてしめたところきちんとしまった。このようにNOR型であっても克服できるのである。孔子さまが見捨てても自分自身は見捨ててはならない。

以前優れた者と劣った者をどのようなイメージでとらえるか解説した。例えば下の図。



これは正しい。もうひとつある。



これも正しい。総合すると下の図になる。



ハーモニー型中庸が一番優れている。しかし難易度が高い。

OR型とバランス型中庸が続くが、偏っているより中庸を得たほうが優れているのでバランス型中庸の方が優れている。実際無難なのはバランス型中庸。よく分からん時はバランス型中庸をとっておけばとりあえず大丈夫な場合が多い。

しかしOR型も優れている。しかしその場合自分の短所と長所を理解しておかないといけない。中途半端にバランス型中庸をとるより個性的でもある。個性を活かしたいならあえてOR型を選ぶべき。もしくはOR型で自分とは対照的な人と組むことでふたりでハーモニー型中庸を実現できる場合もある。大胆な人が繊細な人と組むなど。その場合はひとりでハーモニー型中庸を実現している人より上を行くことも可能である。

NOR型は明らかに劣っている。しかし努力して上を目指すべき。

まとめるとこの図になる。これが私がこのシリーズで言いたかったことをまとめた図になる。ようやく全体像が見えた。

AND型、ハーモニー型中庸などといっているが、もちろん私自身つねにハーモニー型中庸を執れるわけではない。思想では「古典に基づくレベルの高さ」と「分かりやすさ」という一見相反する性質を両立させようと努力してはいる。ハーモニー型中庸を目指している。しかし他の分野ではOR型だったり、別の分野では無難にバランス型中庸をとったり、不得意分野ではNOR型の時もある。これはほとんどの人がそうである。すべての分野でハーモニー型中庸を執れる人は恐らくいない。天才アインシュタインもその得意分野の物理学において「のろま」と言われOR型であったことを思い出してほしい。

この分野はあえてOR型で行こう。この分野は無難にバランス型中庸を執ろう。この分野はハーモニー型中庸を目指そう。など戦略的に選んでいくようにするべきなのである。

結局、
①ハーモニー型中庸。
②バランス型中庸。
③OR型。
④OR型同士で連携。
この4つの選択指がある。

これらをどう使いこなしていくかを次回以降具体的に解説していく。

■作成日:2023年8月28日

続きは能力に優劣はある。しかし個性には違いがあっても優劣は無い。をご覧ください。

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