真理は口コミで広がっていく

真理の力によってイノベーションが起きるとすぐれた製品、すぐれたサービスができる。それらの製品、サービスは人に知られていないので宣伝が必要になる。松下幸之助に次の言葉がある。『一日一話』から引用する。

どんなによい製品をつくっても、それを世の人びとに知ってもらわねば意味がありません。つくった良品をより早く社会にお知らせし、人びとの生活に役立ててもらうという意味で、宣伝広告というものは、欠くべからざるものと言えるでしょう。

広告が大事だと述べている。しかしさらに次のように続く。

しかしその一方で、そういった宣伝がなくても、良い評判を受け、大いに信用をかち得ている製品があります。これは良品はみずから声を放たず、これを求めた人びとによって広く社会に伝えられたということに他なりません。そういう宣伝に頼る必要のない、ほんとうにすぐれた品質の製品を生み出し、世に送る努力を常に忘れてはならないと思うのです。

宣伝は必要である。しかし本当にすぐれた製品、サービスは口コミで広がっていく。宣伝はテレビCMやgoogle広告のように、お金の力でその製品サービスを世の中に知らせることである。しかし口コミはその製品、サービスのすばらしさそれ自体が原因となって世の中に広まっていく過程である。製品、サービスがすばらしいため、それを利用した人は思わずほかの人に話してしまうのである。製品、サービスの持つ真理が、その真理自体の力、真理自体の魅力によって伝わっていくのだ。松下幸之助に次の言葉がある。『一日一話』から引用する。

自分の店のお得意さんが、他の人に、「自分はいつもあの店で買うのだが非常に親切だ。サービスも行き届いているので感心している」と話されたとしたら、その人も「君がそう言うなら間違いないだろう。私もその店に行ってみよう。」ということになりましょう。その結果、お店としては、みずから求めずして、お得意さんを一人増やす道がひらけるということになるわけです。

口コミで製品、サービスが広がっていく過程を述べている。もちろんそのためには製品、サービスに真理、魅力がないといけない。そうでないと口コミで広がらない。ジェフ・ベゾスに次の言葉がある。

感想を言いたくなるようなことをしていなければ、口コミを広めるのは困難である。

AWSというサービスがある。Amazon Web Servicesという。コンピュータシステムを従量制で利用できるクラウドコンピューティングサービスである。ジェフ・ベゾスに次の言葉がある。『Invent & Wander』から引用する。

最初は自分たちのために開発を始めたが、すぐに世界中のあらゆる会社がこれをほしがるに違いないと確信を持った。驚いたのはほとんど宣伝も発表もしなかったのに、たくさんの開発者がこのAPIに群がったことだ。

AWSは口コミで広がったというのだ。AWSは自身が持つ真理の力で世の中に広がっていった。『ジェフ・ベゾス果てなき野望』から引用する。

顧客は口コミで集まるとベゾスは考えていた。だから、マーケティング費用を浮かせて顧客体験の改善に使ったほうが弾み車を回せると思ったのだ。

製品、サービスが口コミで広がるのであれば、広告にかかる費用を減らすことができる。費用を節約した分を、顧客に還元し低価格を実現する。

アマゾンを起業したときのことを振り返ってベゾスは次のように述べている。

我々は最初の30日で、米国の全50州と45の異なる国々から注文を受けたが、そこには1ドルの広告料も使われておらず、口コミのみの成果だった。

次の言葉もある。

テレビ広告にではなく、低価格と無料配送に予算を使うという我々の決定は、この先も顧客に受け入れられていくだろう。

広告を行わないことで費用を節約し、その分を低価格と無料配送に還元していくという戦略をとっている。

口コミは真理自体が真理自身の力によって広まっていく過程である。そこには「自然な力」が働く。それが真理の力である。

■作成日:2023年10月9日

続きはビジネスとは真理の自己展開をご覧ください。

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■上部に掲載の画像は山下清。