ボトルネック分析の具体例

本末分析、ボトルネック分析の具体例を追加しておく。日本のガラパゴス化について。『ガラパゴス化する日本』という本を読んだ。あまり詳しい分野ではないのでこれも間違えてたらゴメン。

日本で成功した企業が海外で売れないという。その原因は日本がガラパゴスだからだという。世界標準からすると日本は特殊な進化をしているので日本で売れたから世界で売れるというわけにはいかない。

モノづくりはまだガラパゴス化の影響を受けづらい。よいものをつくりさえすれば売れるからだ。しかしサービスなどは日本で成功しても海外では売れない。もっともモノづくりでさえガラパゴス化の影響はかなりある。ガラパゴス化の過程は次のように説明される。

①高度なニーズに基づいた財・サービスの市場が日本国内に存在する。
②一方海外では日本国内と異なる品質や機能を求められる市場が存在する。
③日本国内の市場が独自の進化を遂げている間に海外諸国では異なるスタンダードが普及していく。
④気が付いた時には世界の動きから大きく取り残されている。

ここで重要なのは海外で普及するグローバルスタンダードである。日本が独自の進化を遂げている間に海外でグローバルスタンダードが普及し、日本はそれに対応できなくなり、ある時点で日本国内の市場も失ってしまう。

ガラパゴス化を歓迎する人もいる。しかし少なくとも日本がガラパゴス化をし過ぎるのは良くないとされる。なぜなら日本市場があまり大きくないから。アメリカや中国のような巨大市場であればそこで売れれば世界的な企業になれるし売れた企業の方法や技術がグローバルスタンダードになる可能性もある。しかし日本市場の規模ではそれはできない。

日本の市場規模は中途半端なのだという。シンガポールのように国内市場が非常に小さければ最初から国際化せざるを得ない。韓国も国内市場が日本に比べればやや小さいので、韓国のアイドルは最初から世界を目指す。しかし中規模の市場がある日本では日本国内で売れればそれなりにビジネスとして成立する。これがガラパゴス化に拍車をかける。

ガラパゴス化を歓迎する人もいる。文化人に多い。wikipediaの情報だが五木寛之さんもガラパゴス化を支持しているようだ。宮崎駿監督も作品を創るに当たり意識するのは日本人にむけて創ることだという。海外で売れるのはおまけのようなものだと言っていた。実際日本のアニメは基本的には日本国内に向けてつくられる。それが海外でも売れるという仕組みになっている。

純粋な文化は別にビジネスと違ってグローバルスタンダードに従う必要が無い。よいものさえ創れば売れる。だからある程度ガラパゴス化しても問題ないのかもしれない。

例えばジャズだって当時の音楽の先進国であるヨーロッパのクラシック音楽を見習わず、自分たちの音楽をつくったからあのような独創的な音楽になった。日本の浮世絵だってそうだ。中国の京劇だってそうだ。純粋な文化はガラパゴス化は必ずしも悪くない。

ただビジネスはそうはいかない。やはりガラパゴス化は問題と言わなければいけない。『ガラパゴス化する日本』ではガラパゴス化をどう解決するかいろいろな対策を列挙してある。どれも重要な指摘だと思う。しかし私はもっとシンプルに考える。ガラパゴス化の原因は単純に日本人が英語ができないから。これが根本。ボトルネック。ガラパゴス化の原因の全てではないと思う。しかし恐らく半分くらいはこれが原因。

日本人は英語ができないので国内ばかりを見ている。私は海外が非常に好きで英語も多少は出来るがそれでもyoutubeを見るときは9割は日本語の動画。海外の動画は恐らく1割程度。日本人も英語ができれば自然と海外の動画やサイトを見ることも増えるだろうが、英語ができないのでなかなか見ない。みな国内ばかりを見ている。

海外旅行に行くと英語で話しかけられるわけだがいつも言われるセリフがある。「お前英語うまいな。日本人はみんな英語が下手だ。あれどうにかならないのか?」ここからわかるのは日本人の中で海外旅行が好きな人たちですら英語が下手という事実。海外旅行に行くのが好きな人は多い。しかしそのほとんどは英語が話せない。

もう一つ例を挙げる。私が学生の時、東京大学の構内を東大生ふたりといっしょに歩ていた。すると東南アジア人と思われるふたりの若者が近づいてきて英語で話しかけてきた。観光旅行にきたようで、東大を見に来たのだ。非常に驚いたことに私と一緒にいた東大生ふたりは英語を話さなかった。仕方なく私が話して対応した。東大生ですら英語が話せないのかと愕然とした。

なぜ日本人は英語が話せないのか。普通に考えると英語を話せるようになるには才能と努力が必要と考えるだろう。東大生は才能がある人が多い。そして非常に努力をする。しかし英語を話せない。確かに才能も努力も大切だ。しかしもっと重要な要素がある。それは英語の勉強方法を知っているかという点だ。日本人はほとんどの人が正しい英語の学習方法を知らない。東大生が英語を話せないのは、彼らが能力的に劣っているのではなく彼らが努力しないのでもなく、勉強方法を知らないからである。語学に関しては、勉強方法を知っているかが8割の重要性を占め、能力と努力はそれぞれ1割くらいだと思う。

日本の学校の非効率的な勉強の方法は皆知っているので詳しく述べないが、日本人に足りないのは音読である。同じ文章を30回40回と音読する。するとその文章が嫌でも口をついて出てくるようになる。英語圏に3年間留学できる時間と金に余裕のある人は別だが、日本にいて英語を上手くなろうというのであれば音読しない限り絶対に英語は上達しない。

『英語上達完全マップ』という本がある。この本は効率的な英語の勉強方法をこれでもかというほどに徹底的に解説している。この本が広まれば日本人は英語ができるようになると思う。なぜこの本が日本全国に広まらないのか私は個人的には不思議である。金をかけたたくみな宣伝だけで売ろうとする胡散臭い金儲け主義の英語の学習方法がはびこって正しい英語の学び方がなかなか広まらない。

英語をマスターした人は他人に教えると他人も英語がうまくなり差がつかなくなってしまうから英語の学習方法を他人に教えないのではないかとうがった考えをしてしまうくらいである。正しい英語学習方法が広がると英会話教材が売れなくなるから広めないようにしているのではないか、と陰謀論に傾いてしまうくらいだ。

日本人の間違えた英語の学習方法。これがガラパゴス化をもたらしている決定的なボトルネックである。これが諸悪の根源。ガラパゴス化の犯人。

これが解消すれば「正しい英語の勉強」→「英語の上達」→「ガラパゴス化の解消」→「日本企業が海外でも売れる」となるはずだ。本末の連鎖、自然な流れが生じる。ガラパゴス化の原因は恐らく英語だけではないが、原因の半分は恐らく英語なのでこの流れは確実に生じるはずである。

ひとりひとりの会社員、技術者、科学者、公務員、経営者、我々一般庶民が自由に英語で情報を得て海外の人たちと交流できるようになれば、その効果は計り知れない。消費者も海外を見るようになるし市場自体が脱ガラパゴス化され、製品サービスをつくる人たちも自然と海外の動向を見るようになるだろう。グローバルスタンダードの動向にも注意を払う。先端技術を得るためには英語ができなくてはならないと言うし、海外の思想を取り入れるうえでも英語は非常に重要だ。

後は私では影響力が無いので誰か影響力がある人が『英語上達完全マップ』を全国に広めてくれればと思う。もっとも翻訳AIが発達すればこの問題も自然と解消してしまうかもしれないが、それでも翻訳ではなく英語自体を理解できるというのはアドバンテージがある。

中国の言葉に「一了百了」という言葉がある。一つの根本問題が解決すると百の派生的な問題も解決するという意味。正しい英語の勉強方法が広まれば多くの問題が解決するだろう。『ガラパゴス化する日本』ではガラパゴス化に対する多くの原因とたくさんの解決策が列挙されている。原因や対策を全て列挙するのは非常に大切である。しかしそれらの原因や対策のうち、どれが最も根本原因でありどれが根本対策であるかを考えるのも同じくらい大切だ。

日本人は考えられる原因や対策を全て列挙するのは得意だが、どれが根本原因かどれが根本対策かを考えるのは苦手な気がする。原因や対策の列挙は非常に大切だが、それらのうちでどれが一番根本かを考え優先順位をつけるのも同じくらい非常に大切だ。日本の国の戦略も総花主義と言われる。すべての分野に均等に予算や労力を費やす。これも何が大切か列挙するがそれらの間に優先順位をつけないからそうなるのではないだろうか。要は戦略性が不足している。わたしが述べている本末の思想は日本人にとって戦略性のとっかかりになる気がする。

話は戻る。ではそれで日本人の英語力が上がりガラパゴス化が仮に無くなったとしよう。するとすべてうまくいくかというと恐らく今度は別の問題が生じるだろう。ひとつの問題が解決すると別の問題が生じたりする。食糧問題が解決すると人口問題が生じるように。

日本がガラパゴス化しているのは日本企業が海外で売れない原因だが、実は日本にとってマイナスばかりではない。逆に海外の企業が日本に入ってきづらいという面もある。悪名高い日本市場の閉鎖性である。ガラパゴス化で特殊な進化をしているので海外で成功した企業でも日本で売れるとは限らない。日本市場を無視する海外の企業も多い。

昔の戦いでいえば日本は中規模の城に籠城して戦っているようなものである。外に打って出ることもできず、外から入ってくることも少ない。言葉と文化の壁に阻まれて、さらに逆に助けられ籠城しているのだ。

もちろんそんな消極的な戦い方が正しいはずもない。しかし英語が上達してガラパゴスでなくなると、海外企業が日本により進出しやすくなり、人材も海外の大学や企業に流れていくだろう。英語が準公用語のインドのように優秀な人材ほどアメリカに就職するようになるかもしれない。

日本人が英語がうまくなるのは今後の日本において必須である。が、それだけでうまくいくわけではない。脱ガラパゴスももちろん大事だがそれ以上に大事な根本があるからだと思う。それは日本がビジネスをするうえで魅力的な場所になることである。もちろん法人税を安くするなどの政策もそのひとつである。非常に有効。でもそれは末端的な方法だろう。それ以上に日本で新たな戦略や技術が生まれることである。ガラパゴス的な戦略や技術ではなく、グローバルスタンダードに値するような戦略や技術だ。これが根本的対策。そんなことが可能なのか。もちろんすでに任天堂のwiiやswitchなど少しは例があるが次回以降の記事で書いていく。

あと追記しておくがガラパゴス化は悪いことばかりではない。おかしな方向に進化しているのは事実だが、少なくとも進化していく能力はあるということでもある。英語がうまくなり海外の情報を自由に取り入れられるようになり、グローバルスタンダードの動向を把握すれば状況は良くなり正しい進化になるかもしれない。

あとガラパゴス化はある意味個性があるという意味でもある。ガラパゴス化が行き過ぎるのも問題だが、脱ガラパゴス化が行き過ぎるのも個性を失うという意味で問題かもしれない。恐らくちょうどいいバランスというものがある。

続きは思想と言うボトルネックをどうぞ。


■上部の画像は葛飾北斎

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