完全に余談になる。現代ビジネスと日本史の両方を読む人は必ず思うことだが、ジェフ・ベゾスと織田信長は似ている。まず風貌が似ている。織田信長の肖像画を載せる。
もっと本質的には、行っていることが似ている。時代の新しい流れを捉え、それを体系的に組織化し、仕組みを作り、世の中のために役立てる。それに対して抵抗する旧勢力は容赦なく叩き潰す。
信長について述べる。当時、農業技術の向上でそれまでにない商品作物の生産が増え、それまでの座、商人ギルドの枠におさまらない、作物が増えた。信長はそれを体制にうまく取り込んで、座を廃止し、楽市楽座で商業を振興。その後、税をとって財政基盤を確立。
そしてやはり農業技術の向上で、当時、農業に従事しなくても生活できる人口が増え、以前からの基本単位である村から外れた浮浪者の類が増えた。信長はこの時代の変化を捉える。楽市楽座後に集めた資金で、この浮浪者どもを兵として雇う。それまではどの大名も農民兵を用いた。だから農繁期である田植えや稲刈りの時期は、いくさをしないという不文律があった。しかし信長は金で雇った兵で、田植えの時期でもいくさを仕掛ける。敵の大名は田植えを中断して応戦。浮浪者どもは弱いので信長軍はすぐ負ける。敵の大名は田植えを再開するが、信長軍はすぐにまたやってくる。これが何度も繰り返されると、敵の大名の部下の地方領主は辟易してくる。そのタイミングで信長は「こっちに寝返らないか」と誘いをかける。敵の領主はいっそのこと信長に仕えよう、と考えて寝返る。この方法で信長は領土を拡大し、戦乱続きの日本に平和をもたらした。
要はそれまでの既存の秩序からはずれた新しい現象をうまくとらえ、体系化して世の中のために役だてる。その過程で座を支配していた旧勢力との対決になるが、旧勢力は容赦なく叩き潰す。座という古い特権を持つ強大な自社勢力と対決した。
ベゾスのアマゾンもその体系的戦略で古い小売業を破壊しているのを、みなご存じのはずである。
性格も似ている。信長もベゾスも非常に好奇心旺盛である。ベゾスは誰からでも学ぼうとしたという。信長も好奇心旺盛で、当時日本に来ていたポルトガルの文化に非常に興味を示したという。信長が長生きしていれば鎖国はなかったはずである。
人使いが荒いのも似ている。部下の使い方がけっこうきつい。しかしそれは自分の私利私欲のためではなく、真理の実現のために必要だからである。もっとも真理の実現のために自分の権威を高める必要があるだろう。しかしそれは手段であって、目的はあくまで真理の実現なのである。
信長は本当は心優しい人だったという逸話も残っている。しかし大義のため真理のために冷酷になった。ベゾスも心優しい人だという。しかし大義のため真理のためには旧勢力を叩き潰す冷酷な人になる。ふたりとも公のためのサイコパスなのである。
ベゾスは部下が素晴らしい仕事をすると、半分冗談で、膝をついて「ありがたき幸せ」と言って謝意を表するという。ベゾスが部下に怒るのも真理のため、部下に感謝するのも真理のためであろう。
スティーブ・ジョブズに次の言葉がある。
Stay hungry.
Stay foolish.
信長はこの言葉がよくあてはまる。大きな大名になってもそこで安住せず、日本に平和をもたらすまで、ハングリー精神を忘れない。彼は常識にとらわれなかった。すぐれた発想をどんどん実行した。若いころは、「うつけ」と呼ばれていた。ジョブズの言葉がこれほどあてはまる人も少ないと思う。
続きは政治家の大きな誠実さと小さな誠実さをご覧ください。
■作成日:2024年12月2日
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