ろうあ者の人たちについて

私はろうあ者の人をふたり知っている。ひとりは幼なじみ。小さいころ同じ団地に住んでおり、小学校と中学校はずっと一緒。小学校の頃はいつも一緒に登下校していた。家でもしょっちゅう一緒に遊んだものだ。彼は絵をかくのがうまく、大学時代はCGの創作をしていて、ゲーム会社に就職した。

もうひとりは大学受験のために浪人していた時のクラスメート。女性。駿台という予備校のお茶の水三号館の東大コース。文系だけで600人いてAクラスからDクラスに分かれる。そのうちの150人が東大に合格する。今はどうか知らないが、当時は600人全員、成績順でランクづけされていた。席もランク順に並ぶ。彼女は耳が悪いので特別にいつも一番前の席に座っていた。私はあまり成績が良くなくて20位くらいだったが、そのろうあ者の彼女はなんと4位。ランク一桁台のひとはすごいなという印象が残っている。

ろうあ者のひとは発音が悪い。だからよく知らない人はろうあ者の人は頭が悪いと思う。幼なじみだった彼は、全く頭が悪くなかったが、小学校のころ彼のことを良く知らない人から「頭が悪い」とバカにされることがあった。

たしかにろうあ者の人は発音が悪いので頭が悪く見える。しかし彼らは頭が悪いのではない。耳が悪いのである。もちろん頭が悪い人もいるだろうが、頭がいい人もいる。それは耳が良い人のなかにも、頭がいい人と悪い人がいるのと同じである。ほとんどのひとは普通の人である。それは耳がよいひとたちもほとんどのひとは普通の人たちであるのと同じである。

耳が悪いことでハンデを背負っているのは事実だ。しかしそのハンデにめげない強さを持っている人も多いのである。

■作成日:2025年6月17日。


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■上部に掲載の画像は山下清「ほたる」。